−黄金の刻−OP07 ( No.79 ) |
- 日時: 2015/10/07 00:32
- 名前: 位坂敏樹(misaka) ID:H1KsufPA
- 「それは災難だったわね。こちらもカソミールの港封鎖のせいで久し振りに随分歩かされたわ」
そして、夕暮れ時にカソミールへと到着した君達は待ち合わせ場所である”剣の切っ先亭”で ブランダ=チュールズ夫人に出迎えられ夕食となった。彼女は”黄金の時計”の世間的なリーダーであり、 かつては腕の立つローグであったが、現在ではその手腕は専らアンドーランでの投資に向けられている。 君達が彼女は冗談交じりに話す”羽振りの良い悪党”からいかにして金を巻き上げたかに耳を傾けていると、 白い髭面に渋い表情を張り付けた”烈火の”ヴェルス=クランデルが戻ってきた。 「フリンの奴、とうとう現れずじまいだ。城門が閉じてしまった以上、今日はもう来ないだろう」 毎回あんなに楽しみにしていたのに、とブランダが返すと、全くだと言わんばかりに肯いたヴェルスは 杯を手に取り、一行を見渡しながら言った。 「兎も角、始めるとしようか。若き冒険者達よ、今日はよくぞ来てくれた。今回は私の奢りだ、存分に楽しん でくれたまえ」
杯が打ち鳴らされ、宴が始まった。話題は先程迄ブランダに話していた明け方の戦闘に始まり、互いの近況や 周囲の情勢、そして遙か北のニューメリアやワールドウーンズ、タルドール北部を襲った寒波やベルクゼンの 巨人達の蜂起にまで及んだ。ヴェルスはそのどれも熱っぽく、大きな身振りを交えて伝聞を語り、時折 ブランダがそれに注釈を入れるといったやり取りが夫婦ならではの暗黙の了解も含む親密さで交わされていた。 そして、話しがここカソミールの話題に戻ると、話題の内容故かブランダが語りの中心となり、一行に様々な 情報をもたらしてくれた。曰く
・そもそもカソミールの情勢不安は1年前よりヴァーデュランの森が立ち入り禁止になったことが発端である。 ・現在ヴァーデュランの森では危険な怪物による被害や行方不明の報告が多発しており、木材の伐採が不可能となっている。 ・カソミールはヴァーデュランの森から供給される材木を使用した造船を主な産業としており、供給の不安定さ故に材木の値段が上がりつつある。 ・結果として、カソミール全体が経済的に不況の状況下にあり、港でのストライキが発生した。 といった事を教えてくれた。
「治安も悪くなり、ひょっとしてと思うがフリンも何らかのトラブルに巻き込まれているのかも知れん。 すまないが明日、郊外のフリンの別荘を確認してきてくれんか?」 ヴェルスは心配したような表情を浮かべ、君達に提案してきた。 「こちらはもう1人のダーンを待たねばならなくてな…それにこれは依頼であると同時に試験でもある。 ノイシュ、分かるな?」 厳めしい顔を向けるヴェルスの気迫に押され、ノイシュが首肯すると彼は話を続けた。 「そもそも、毎年この時期にカソミールに集まり冒険を行うという”黄金の時計”はハーフ・エルフの ティールガン=フリンの未だ満たされぬ若き冒険心を満足させたいが為に始めたようなものだったが、 我々としても若い連中と肩を並べてちょっとした冒険をするというのは過ぎた日を思い出してそれなりに 高揚するものだった…持ち上げ構える度に日々槌の重さが増すのを実感するようになってからは尚更にだ。」 そして、ブランダがその言葉を引き継ぐ 「ですが、私も夫ももうそれほど若くはない。より若い冒険者達の後見人として過ごすべきだと考えています。 もしもあなた方が今回の試験をきちんとこなせるのであれば、私達はあなた方を援助し、”黄金の時計”の 一員として認めましょう。」 「まずはティールガン=フリンの無事とダーン=フォシムスの行方を確かめてきて下さい。フリンについては、無事であると 確認出来たならば、あとは私達が直接会いに行きましょう」
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